大好きな先輩は隠れ御曹司でした
そんな事ない。今だって、こんなに大事にされている。そう信じながらも肝心な事は聞けない?

じゃあ、どうして教えてくれなかったの?

頭の中は堂々巡りで、心の中は乱れ続けて。子供ならきっと心のままに聞けただろう。あるいはもっと大人なら聞かなかったフリが出来ただろうか。
でも、中途半端に大人の光希は立ち止まって動けない。


申し訳ないと思いながらもこれ以上食べる事が出来なくて、光希はスプーンを置いた。

「食欲もないのか?」

そんな光希の気配を察してか、岡澤がベッドの横に戻ってきた。

「せっかく作ってくれたのに。残してしまって、ごめんなさい」

「いや、残すのは仕方ないよ。でも……。ん、やっぱり今夜は泊まるよ」

「え!?それはダメって私、言ったじゃない。先輩、明後日からイギリスなんだよ」

「大丈夫だよ。光希は俺より自分の心配してろ」
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