大好きな先輩は隠れ御曹司でした
「ーーーありがとう。大好き」

あんなに悩んでいたくせに、岡澤を好きな事しか考えられなくなる。

「うん、俺も大好き」

胸にしがみつく光希の頭に唇を落として、岡澤も甘く優しく囁く。

そのまましばらくして、不意に岡澤が拗ねた声を出した。

「中止じゃなくて延期、だからな」

「え?」

「俺、楽しみにしてたんだからな。イギリスから帰ってきたら、今度こそ会社の近くに飲みに行こう。で、みーんながざわつくくらい、仲が良いの見せつけるんだ」

「あ……」

やっぱり岡澤は鋭い人で、光希の思惑なんて正確に見抜いていたのだ。

「今更、止めるってのはなしだからな」

そう言った岡澤の声は、いつのまにか喜びを含んでいた。
< 55 / 148 >

この作品をシェア

pagetop