Silver Night-シルバーナイト-
「おい、いつまでそんなとこいんだよ。早く来い」
いきなり聞こえてきた声に、梓かと思いビクリと肩を揺らしたけれど…振り返る直前にそれが琉聖の声だと分かり安心したようにゆっくりと振り返る。
「うん、今行く」
「何だよ、自分の馬鹿さ加減にでも呆れてたのか?」
壁に背を持たれながら腕を組む琉聖は、まるで私の心を見透かすように、ニヤリと口角を上げて笑って見せる。
「うん、そう…自分が笑えて仕方ない」
よく恋愛ドラマや漫画なんかで、一人の人に執着して一喜一憂する人達をどこかで見下してた。
羨ましいと思う反面、興味がないと何処かで思っている自分もいて…
それなのに今、自分がその立場になって初めて知った。
この感情のもどかしさや苦しさ。
嬉しさや幸福感。
好きでたまらない。
いつの間にこんなにも感情は膨らんでいたんだろう。
なのに……
それなのにどこか満たされない……
恋をしている今が幸せだと胸を張って言えない。
恋愛に困難は付き物だというけれど、
確かに私の心の中はポッカリと穴が空いている。