冷徹皇太子の溺愛からは逃げられない
「そういえば、殿下はセオドール様にとても慕われているのですね」

 離宮までまだ少し道のりがあるので、フィラーナは違う話題を振ってみた。

「そうか? まあ、俺もセオドールも似たような境遇だからな」

 詳しい事情を知らないフィラーナに、返す言葉は見つからない。フィラーナはテレンスの吐き捨てるような発言を思い出した。

『戦利品の女から生まれ出たーー』

 ウォルフレッドの出生は知らないが、あんな言い方をされて当の本人は嫌な気分になったはずだ。

 ふいに黙り込んだフィラーナの表情が少し曇っているのを見て、ウォルフレッドは彼女の心情を読み取り、おもむろに口を開いた。

「テレンスの言っていたことが気になるか?」

「あ、いえ……」

「本当のことだ。今さら気にもしていないが。昔からあいつとは馬が合わなくてな。自分の位の方が上だと、いつも鼻にかけている」

「そうなんですね……」

 自国の王が後継者選びの際、能力を重視する人物で良かった、とつくづくフィラーナは感じた。しかし、その後継者はかなりの変わり者なのだが。

(……もしかしたら殿下が妃を迎えたくないと考えているのは、自分の出生に関することが原因なのかしら……)

 だとしたら、到底フィラーナが踏み込める領域ではない。

 そうしているうちに貯水池と小屋を横切り、森の出口付近に到着した。離宮のこじんまりとした庭園が視界に入る。

「殿下、もうここで結構です。ありがとうございました。では失礼します」
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