witch
神通さんの家から帰る途中、私と先生の会話は弾んだ。
最近の授業はどうだとか、学校はどうだとか、長野先生の家庭がどうだとか。長野先生が結婚していることはここで初めて知った。まだ若いから結構驚いた。

「時彦さんの命の恩人って長野先生ですか?」
私の問いに先生は恥ずかしそうに笑う。
「違うよ」
先生はあっさりと否定した。
「時彦さんの恩人は、小城っていう人なんだ。」
初めて聞く小城という名に首をかしげる。
そんな私に長野先生は丁寧に説明をしてくれた。

「小城さん所はご夫婦で化け物を倒す方法を研究なさっているんだ。その研究で得た知識を使って、昔時彦さんが化け物に襲われたとき、命を救ってくれた。その時に、時彦さんは何か恩返しされてくれと言ったそうだが、小城さんたちは、『私達は自分のやりたいことをしただけ』と言ったそうだ。その姿に憧れた時彦さんは私も人のために動ける人間に、人を守れる人間になろうと決意した。その結果が今の時彦さんだ。」
長野先生の声からは時彦さんを心から尊敬しているということがはっきりと感じられた。
「へぇ」
私は適当な返事をした。
あまりにも素晴らしい話だったため、私の言葉で語るのはおそれ多い。そう感じた。
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