困難な初恋
5.告白
秋葉がうちに泊まった翌週水曜日、
成瀬を飲みに誘った。

報告しないといけないことがある、と伝えたので、
何の件かはわかっているようだった。そりゃ、察するよな。

「お疲れ様」
「お疲れ」

カチンとグラスを合わす。
「やー、今期も達成してよかった。まじで」
「ほんとにな。」
しっかし疲れたわー、と成瀬が脱力する。

しばらくは仕事の話、お互いの仕事のトラブルや苦労話をしたが、
その話をしながらも俺の頭は一つのことで一杯だった。
2度目のおかわりを注文したところで、
いよいよ、と切り出した。

「あの件なんだけどな」

待ってました、とニヤニヤする成瀬に、

「すまん!」

と頭を下げる。

え。なに?だめだった?と言う声が聞こえたので、
首を横にふる。

「いや。だめというかむしろ、付き合ってる」
「え、やったじゃん」
「本気で付き合ってる」
「やったじゃ……え?」

成瀬が固まった。

「あれ、ゲームは?」
「すまん、無しにして欲しい」

一瞬、間は空いたが。

「まじで?」
「まじで。」
「お前が?」
「俺が。」
「あの、誰紹介しても全く微動だにしなかったお前が?」
「微動ってなに。」

その後も、そうかー、そうかー、お前がなぁ、と
腕を組み、神妙な顔をして頷いている。

ゲームの賭けについて、自分なりに侘び、というのも変だが、
ゲームから足を洗うことも含めてお詫びをしたいという話をしたが、
顔を上げると、成瀬は予想以上に穏やかな優しい顔をしていた。

「おっまえ、ほんとに良かったわ。」

このまま独身貴族ルート確実かと思ったわ、
と気が早い話をしている。

正直、ほっとした。
成瀬とは大学からの付き合いだったが、
ゲームも含め、表面上の付き合いしか出来ていなかった。
こんなことを言うと、過去の友人のように、「つまらない」と自分から離れてしまうかと思った。
怖かったのだ。

「成瀬、ありがとう」

えー、じゃぁ俺仲人じゃんー?とニヤニヤする成瀬が持つグラスに、
いろいろな感謝の気持ちを込めて、
チン、と自分のグラスを当てた。
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