困難な初恋
「ただでさえ・・・この際、『私たち』って言うけど、
やっぱり親に捨てられてると、人との関係が怖いんだよ。
絶対的なものはない、いつか終わりが来るってどこかで思って、
踏み込みすぎないようにして。
それが、あの時から酷くなった気がするな。」

話を聞きながら、どんどん自分が沈んでいくのを感じていた。

やばい、きっと秋葉が抱く気持ちは

「またか、結局同じか。って感じだろうね。」

心を読まれたような気持ちになり、
純にすがるような目を向けてしまう。

「まぁでも、会社でのあんたの姿を見てて、信じてもいいかなって思ったみたいだから、これで別れたとしても、そっから頑張ってみてもいいんじゃない。」

絶望的なことを簡単に言ってくれる。
ただ、会社での姿、というところが気になった。

「あんた、八方美人だけど、結構弱い立場の人間ほっとけないんだってね。
はっきり言えなくて悪い立場になりそうな人、かばったり。
秋葉が教えてくれたよ。その分、あんたの仕事が増えて、大変なのにそうでもないフリしてるって。」


ぐっと喉がつまった。
自分には興味も何もないと思っていたが、見ていてくれたのだ。
「フリしてる、ってなに。かっこわる・・」

右手を額に置き、ため息をつく。
覚悟はまだ、定まってない。

「とりあえず、あんたから話してね。話してないようだったら私から言うから。
その様子見てると、まぁ、本気なのかもしれないけど、ほんと、小学生レベルだよ。
もうやめたほうがいんじゃない。」

項垂れた俺を哀れに思ったのか、伝票をサッと持ち、純はその場を去った。
取り残された俺は、しばらくするとフラリと立ち上がり、店を出た。
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