困難な初恋
その日は夢を見た。
恐れていたことが現実になってしまった夢。
話しかけてもそらされる目、
二度と笑いかけてくれることのない瞳、

「うそつき」

ガバッと起き上がる。最悪の目覚めだった。

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

秋葉には、ご飯の誘いをメールした。
このまま告白した後のことを想像するだけでダメになりそうだったが、
その日が迫ってくると、更に胃がキリリとした。

「お疲れ様」
「お疲れ」

秋葉とは店で待ち合わせをした。
楽しく話してくれる笑顔、
照れると赤くなる耳、
好きなものを食べている時は目線が食べ物から動かない可愛いクセ、
全部を今のうちに目に焼き付けておきたいと思ってしまう。

でも、いつまでも話さないわけにはいかない。

「秋葉、ごめん」
「謝らないといけないことがある」

きょとんとした秋葉に、
はじめ、秋葉に近付いたのはゲームだったこと、
ただ、秋葉と関わるうちに本当に心惹かれたこと。

今は、ゲームをしていた相手にもそれを伝えていること。

顔を見ることが怖く、一気に話したあと秋葉の顔を見た。

秋葉は、顔を強張らせていた。

「また・・・」

純の話を聞く前であれば、また、という言葉に疑問を持つだろうが、
その言葉を聞き、ズキ、と胸が痛んだ。

「ごめん、でも、ほんとに今は好きなんだ」

そう言っても、秋葉の表情は変わらない。
永遠かと思われる無言が続く。

ぽつりと、秋葉が聞いてきた。
「なんで、今言ったんですか」

「このまま、付き合っていきたいと思ったから・・・
隠したまま付き合うのは、無理だと思った。」

そうですか、とぽつりと言い、また無言になる。

「ちょっと、時間もらえますか。」

そう言い、秋葉は自分の分だけ財布から出し、
店を出ていった。

秋葉を止める術を、俺は何ももっていなかった。
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