困難な初恋
ストレートティーとカフェラテを頼み、奥の席に座る。

暖かい紅茶を飲み、秋葉がほ、と息をつく。

「びっくりしたね。結構絡まれてたけど。成瀬、どこいったの?」

問いかけに対して、今日はスムーズに返ってくる。

「成瀬さんは、事務の女の子たちに結構飲まされて、からまれて、どこかに消えちゃったんです。近くにはいらっしゃると思うんですけど」

あー、あいつ、ああ見えて酒弱いから、そう返しながら観察する。

いつもより目が潤んでる。ちょっとぼーっとした感じで、ピシっと背筋を伸ばしている普段とは違い、ソファ席に身をうずめている。

「そっか。危なかったな。あそこの部長、時代錯誤のセクハラ親父だから」

「セクハラ親父・・・」

くすくすと秋葉が笑う。その笑顔に釘付けになった。

「酔ってる?」

不思議そうに顔をあげて言う。「弱くはないですけど。ちょっとは酔ってますよ」

いやいや、だいぶ酔ってる。

「酔うといつもそうなるの?」

「そうですね、ゆるくなるとか言われますね。
大学の時も、それで絡まれることも多くて、あまり飲み会に参加しなくなったんです」

あー。それで。分かるわ、めっちゃ分かる。ギャップがでかい。

「さっきの・・・怖かった?」

少し思い出したのか、秋葉の目線が下がる。

「ごめん、思い出させた」

「いえ、大丈夫です。久しぶりだったので。接待は嫌、で辞退するのも変な話ですからね。」

思ったより素直に会話が出来る。

今かな、と思った。

「宮川さんって、彼氏いる?」

リスクはあるが、一度直球でいってみようと思い、思い切って言ってみた。

ただ、途端に鋭くなった目を見て、身体が硬くなる。

「それは、どういう・・・」

素面程鋭くはないが、警戒心を取り戻させてしまったようだ。

「や、はっきり言うと、前から気になってた・・・だから・・・」

ばくばくと自分の心臓が鳴るのが分かる。最後まで言葉を紡ごうとしたが、言葉が出てこない。
秋葉が口を開いて何かを発しようとしたその瞬間

「秋葉~~!なーにしてんのこんなとこで!!」

突然秋葉に抱きつく女。目の前がピンク色の奇抜な色で一色になる。

ドピンク・・・女!?

「純ちゃん!?」

ん!?友だち!?このピンク頭が!?

固まったまま言葉を発せない俺に気付いたのか、ピンク色が振り返った。

「あ、いい男」

振り向いたのは、秋葉より年上には見える、化粧の濃い、活発そうな女だった。
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