【2025.番外編&全編再掲載】甘い罠に溺れたら
「だから、今まで見たいな軽はずみな行動をして、マスコミにでもかぎつけられたらまずいの。そろそろ控えてくださる?」
まるで愛人にものを言うように、話すこの人にだんだん腹が立ってきた。
「何か勘違いされていませんか?」
やっとのことで言葉を発した私を、驚いたような顔で宝生さんは見た。
「私と部長は上司と部下という関係だけで、特になにもないんですが」
否定したその言葉に、宝生さんはむしろ満足そうに微笑だ。
「よくわかってるじゃない。あなたみたいなタイプが珍しいのよ。尽くしてくれる女が欲しかっただけ」
宝生さんは捨て台詞にも似た言葉を発した。
尽くしてくれる女……。
確かに、都合よくご飯を作り、甲斐甲斐しく世話を焼く私はそのポジションに最適だったのかもしれない。
その事実が重くのしかかり、私は言葉を発することができなくなった。