【2025.番外編&全編再掲載】甘い罠に溺れたら

「あなたも立場をわきまえているのならいいわ。あなたが出しゃばれば、佐伯グループにとっても迷惑がかかるものね」

「え?」
その言葉の意味がわからず問いかけた私に、宝生さんは一瞬表情を止めた後、クスリと笑った。
「嫌だ。優悟ったらそんな事も話していないの?あなたってそれぐらいの存在なのね」
勝ち誇った顔が、5年前私に向けられた笑顔と重なる。

泣きたくなる気持ちをなんとか抑えた。
この人だけには、涙なんて見せたくない。

「優悟はこの会社の親会社の、佐伯ホールディングスの社長の息子よ?まあ次男だから公にもされていないし、優悟自身、その事を隠して実力を試したいとかいってアメリカとか、部長とかやってるけど」

噓……。佐伯ホールディングスの?
そんなすごい人なの?

私はそんな人を好きになったの?
衝撃の事実に、私はその場でぐるぐると今までの事を思い出す。
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