【2025.番外編&全編再掲載】甘い罠に溺れたら
「なんで?触れないの……」
こんなことを言うつもりなど全くなかった言葉が、零れ落ちた。
「あっ……ちが……」
否定の言葉を言った時にはもう、部長の両手で頬を包まれて、涙を拭われていた。
その温かい手のぬくもりに、私の涙はもう止まらなかった。
「どうして……?どうして?」
なんでこんなに優しく触れるのに、結婚するの?
大切な人がいるんでしょ?
それなら私は2番目でも……。
そんなバカな思いすら頭を駆け巡る。
5年前よりも、もっともっと今はこの人が欲しい。
あの頃みたいに、笑っているだけじゃなく、この人と一緒にいたい。
そんな夢のような思いがあふれ出る。
お互い探るような視線が絡み合って、部長との距離が近づくのがわかったが、私は視線を外すことができなかった。
「逃げないの?」
唇が触れそうな距離で、部長が問いかける。
ダメって心の中で警告がなる。
でも、最後に、最後でいいからキスしてほしい。そんな気持ちになり私はただ部長の瞳を見つめた。