【2025.番外編&全編再掲載】甘い罠に溺れたら
もうドロドロに溶かされそうな、強引なキスに立っていられなくなり、私はズルズルと座り込んだ。
そこでやっと離された唇に、私は泣きじゃくりながら声を上げた。
「どうして?どうしてキスなんてするのよ?」
「沙耶が好きだからだよ!お前が好きだからに決まってるだろ!そんなことわかってただろ!!」
部長も声を荒げて言うと、私を突き放すように私から離れ、苦悩の表情で床に座り込んだ。
「え……?」
私を好き?
何を言ってるの?
ぼんやりと、私は髪をかき上げて、いらだつような表情をして座る部長を見つめた。
「だから、俺はお前だけなんだよ!お前が……」
そう言って、泣きそうな顔で見つめられたあと、
「沙耶……」
何かを懇願するように、私の名前を呼ぶと、私の腕を引き寄せ、そっと抱きしめた。
呆然と抱きしめられる腕の中で、私はただそのぬくもりと、今言われた言葉を頭の中で繰り返していた。