【2025.番外編&全編再掲載】甘い罠に溺れたら
「でもさ、その部長の幼馴染の女……最悪」
その言葉に、私も最近幸せで薄れていた、その人を思い出した。
友里はどんな女よ?そんな事を言いながらまだ許しがたいようで、文句を言ってくれていた。
「ありがとう」
そう言った私に、友里はビールをコトンと置くと、私をジッとみた。
「沙耶、絶対そんな女に負けちゃだめよ」
ビシっといった友里に、私も思わず背筋を伸ばした。
「脅すわけじゃないけど、そんな女が諦めたかどうかわからないし、また何かしてこないともかぎらないでしょ」
確かにそうだ。会社まで乗り込んでくるほど、優悟君を好きなのだろう。
あの頃からずっと。
「この際、仕返しもしなさいよ。そんなことまでされて」
お酒も進み友里の怒りもどんどんヒートアップしてくるのを、なだめながら私はまだ優悟君にも聞けていない、自分でも無理やり考えないようにしていた事実を思い出す。
佐伯グルーブの息子という事実を。
ようやく日名子さんへの怒りを終えたのか、沙耶は少しにやりとした笑顔を私に向けた。
「ねえ、沙耶。普段の部長でどんな人?どういう所に住んでるの?」