【2025.番外編&全編再掲載】甘い罠に溺れたら
友里の言いたいことは、私にも分かった。
自分自身が、極端に男性に対する対応が冷たいことを。

でも、私は男性と必要以上に親しくしたくないし、プライベートに踏み込んでほしくなかった。

水田先輩……ごめんなさい。
いつも気にかけてくれて、ありがとうございます。

心の中でそう唱えると、私はパソコンに目を向けた。

羽田沙耶、25歳。大学を卒業後、このSTI株式会社の企画営業部に入社して4年目。
STI株式会社は、世界の食品を扱う大手企業だ。
世界中に支社があり、誰もが一度は名前を聞いたことがあると思う。

私が所属する企画営業部は、海外で人気の商品などをリサーチし、国内での販売を促進するための企画や戦略を立てる部署だ。

最近では、韓国で人気のお菓子や海苔などを担当していた。
初めの頃はとても苦労したが、今は大きなやりがいを感じている。

私は気合を入れるためにデスクの引き出しを開け、ヘアクリップを取り出すと、ここ5年ずっと肩より伸ばしたことのない、濃いブラウンに染めた髪を邪魔にならないように留めた。
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