【2025.番外編&全編再掲載】甘い罠に溺れたら
その夜はなかなか眠れず、シーツをかぶったまま、ただじっと天井を見つめていた。
昔のままの彼の表情だった――そんな気がして、さっき呼ばれた名前と、そのときの表情が何度も頭に浮かぶ。
少しだけ、あの頃に戻れたような気がした。
けれど、すぐにあの日の光景が鮮明に蘇る。
「あーあ、バレちゃった。別に俺には、お前だけじゃないんだよ」
そう言って、髪をかき上げた彼のきれいで、冷淡な表情。
そのすぐ後ろでは、私とは違う。
丁寧に巻かれた髪の、大人っぽい女性が、あざ笑うような目でこちらを見ていた。
――あれが、すべてだったはずだ。
あの出来事について、今さら何を話す必要があるというのだろう?
あの日から、私は髪を伸ばしていない。
長い髪も、女としての感情も、どこかに置いてきた気がする。
――こんなこと、考えていないで眠らなきゃ……。
ギュッと目を閉じても、こびりついた過去の残像は消えてくれない。
私は、大きくため息をついた。
昔のままの彼の表情だった――そんな気がして、さっき呼ばれた名前と、そのときの表情が何度も頭に浮かぶ。
少しだけ、あの頃に戻れたような気がした。
けれど、すぐにあの日の光景が鮮明に蘇る。
「あーあ、バレちゃった。別に俺には、お前だけじゃないんだよ」
そう言って、髪をかき上げた彼のきれいで、冷淡な表情。
そのすぐ後ろでは、私とは違う。
丁寧に巻かれた髪の、大人っぽい女性が、あざ笑うような目でこちらを見ていた。
――あれが、すべてだったはずだ。
あの出来事について、今さら何を話す必要があるというのだろう?
あの日から、私は髪を伸ばしていない。
長い髪も、女としての感情も、どこかに置いてきた気がする。
――こんなこと、考えていないで眠らなきゃ……。
ギュッと目を閉じても、こびりついた過去の残像は消えてくれない。
私は、大きくため息をついた。