【2025.番外編&全編再掲載】甘い罠に溺れたら
じっと写真の中の〝優悟”を見つめた。
彼も何かを誤解してた……。
それでも今の現実はもう変えることは出来ない。
会えば憎しみ合うようなことばかりで、再会した意味など分からなかったけど、こうして話せたことで前に進めたと思う。
この再会は必要な事だった。
ひどいことも、傷つくことも言われたけど、いつも本気で心配してくれてるのが伝わった。
だから私はやっぱり今の彼に惹かれたんだと思う。
昔より大人になって、強くなった彼は新しい幸せを見つけていた。
裏切ったって恨んだこともあったけど、もう今となってはどうしようもない。
ひとつだけ後悔してるのは、彼の優しさに気づいてしまったことかもしれない。
知らなければ、嫌な人だったと新しい記憶に塗り替えて、次に行けたのにな……。
そんな事を心の中で写真に語り掛けた自分が可笑しくて、私は泣き笑いを浮かべていたと思う。
その箱をジッと見た後、悩んだ末にしまい込まず、机の引き出しにしまうと、私は窓の外の星の無い東京の空を見上げた。
もう一度、あの満天の空をみたい。
そう思った。