凛々しく、可憐な許婚
"政略結婚じゃなかった。弥生ちゃんも尊くんのことを好きな訳じゃなくて、私に協力したかっただけなんて,,,"

勝手に勘違いして、嫉妬して落ち込んで、本当に独りよがりの馬鹿みたいな時間を過ごしてしまった。

尊に散々愛されたあと、咲夜は今、一人でシャワーを浴びている最中だった。

ぬるめのお湯を頭からかぶりながら、軽い自己嫌悪に陥ち入りつつもこれまでのことを熟考する。

"それならなんで、弥生ちゃんは私じゃなくて尊くんに連絡を取ってるんだろう?それに、吉高先生が私を煽る意味は?"

新たに湧き上がってきた疑問がムクムクと顔を出す。

先にシャワーを浴びた尊はもう眠っただろうか?

咲夜は今日、いつもよりかは飲みすぎたが、意識を飛ばすほどは飲んではいない。

尊とのじゃれ合いで、現にすっかり酔いは冷めてしまっていた。

泣いてわめいて、尊には恥ずかしいところを見られたが、最終的には疑問や悩みが解消したので結果オーライと言えるだろう。

祖父に厳しくしつけられ、他人に甘えることも踏み込むこともできずに育ってきた。

これからは尊が支えて、受け止めてくれる。

その事をどれだけ心強いと咲夜が思っているのか、きっと誰にもわからないだろう。

縮んだ心を持て余していた子供のような咲夜が、尊の広い心に支えられて、大海原に飛び出した瞬間が今日だった。

これからは何でも相談しよう。

不安な気持ちが誤解を生んで、望まない結末を運んでこないように。
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