凛々しく、可憐な許婚
「ずいぶんゆっくりとシャワーを浴びてたね」
咲夜がシャワーを浴びてベッドルームに戻ると、スマホを触っていた尊が咲夜の方を振り向いて微笑んだ。
咲夜がベッドの中に潜り込むと、自分の方に抱き寄せながら尊は咲夜の頭頂部に唇をあてて言った。
「その表情は、また新たな疑問が湧いたって顔だね。閉じ込めないで吐き出してごらん」
「どうしてわかるの?」
「何年君を見つめてきたと思ってんの?一緒に暮らしはじめてからだってずっと咲夜のことばかり考えてるんた」
尊の胸にピッタリと顔を寄せる咲夜は、その鼓動を聞きながら、何とも言えない安心感に包まれていた。
「弥生ちゃんは何故、私じゃなくて尊くんと連絡を取っているの?」
素直になる決心をした咲夜は、今度はアルコールの力を借りずに尊に質問をすることができた。
「その答えは結婚式の日に教えてあげる。決してマイナスなことではないから、それだけは信じて待っていてほしい。彼女のサプライズらしいよ」
弥生の気持ちを知った咲夜は、尊の言っていることを疑うほど弱くはなかった。だから、ここは全面的に信じて待つことに決めた。
「わかった。それで、尊くんと弥生ちゃんがコーヒーショップで一緒にいた友達は誰なの?」
「そいつはこのはな学園高等学校で俺の弓道部の同期だった川上健太郎だよ。咲夜が2年生の時に会ったインターハイ予選会場にいた五人のうちの一人なんだけど,,,。ねえ咲夜は、鍋倉さんが2次元オタクだって知ってた?」
「2次元オタク?」
アニメやゲームのキャラに恋しておっかけとかをする人達のことだろうか?
「ああ、鍋倉さんの外にも同人誌を描いている新清涼女学院の弓道部員がいたらしいよ。その人たちと鍋倉さん、俺と咲夜をモデルにした漫画を描いているんだって。高校時代からずっと」
「私と尊くんの漫画?!」
酔いの冷めた咲夜は、今は素の状態で驚いているらしい。目をくるくるさせているのがその証拠だ。
「川上も高校時代は同人誌を描いていたんだ。もっとも、モデルは咲夜と鍋倉さんだったけどね」
「私と弥生ちゃん?!」
ますます混乱した咲夜は大きく首を傾げている。
「まったく可愛いな、咲夜は。,,,川上の描く漫画は,,,その、百合だったんだけど、鍋倉さんの方はTLとBLどちらもありらしいんだ」
百合とは女性同士の恋愛もの。TLとはティーンズラブ。BLとはボーイズラブのこと。
尊はスマホをサクサクっと操作すると、ホルダーを開いて、保存してあったファイルを咲夜に見せた。
「○☆□,,,!!」
衝撃的な内容に加え、そのモデルが自分と尊、自分と弥生という事実に狼狽えている。
しかも、一部は咲夜が男性化して尊と恋人同士になっているものもある。
尊も初めて読んだときは言葉を失ったのだから、咲夜の混乱はもっともだと理解できる。
「もちろん名前も変えているし、当時の弓道部員以外は誰も俺たちがモデルだとは思っていない。これね,,,結構フォロワーが多いらしくて、いまだにシリーズとして続けて描いているらしいよ」
尊は苦笑しながらもなぜか嬉しそうだ。
「川上の方は、高校までで弓道をやめて、映像の道に進んだから、君達との接点もなくなって百合漫画を描くのをやめたんだけどね」
漫画の中で、咲夜と弥生に似たキャラクターが絡んでいる。
「咲夜は勝手にこんなことをする鍋倉さんや川上が許せない?」
真っ赤になっている咲夜だが、その事については大きく否定した。
「名前も変えてるんだし、個人を特定できない想像上のお話なんだからモデルにされるくらいなんともないよ」
咲夜がそういうと、尊も笑って頷いた。
「俺も同じ考えだ。だから、鍋倉さんと川上が気が合うんじゃないかと思ってあの時に紹介したんだ」
想像通り、二人は気が合っていた、と尊は語った。
それを聞いて、咲夜の悩みはひとつ解決した。やっぱり疑問は口にしないと解決しないんだなと、遅れはませながらではあるが、経験を通して咲夜は学んでいた。
咲夜がシャワーを浴びてベッドルームに戻ると、スマホを触っていた尊が咲夜の方を振り向いて微笑んだ。
咲夜がベッドの中に潜り込むと、自分の方に抱き寄せながら尊は咲夜の頭頂部に唇をあてて言った。
「その表情は、また新たな疑問が湧いたって顔だね。閉じ込めないで吐き出してごらん」
「どうしてわかるの?」
「何年君を見つめてきたと思ってんの?一緒に暮らしはじめてからだってずっと咲夜のことばかり考えてるんた」
尊の胸にピッタリと顔を寄せる咲夜は、その鼓動を聞きながら、何とも言えない安心感に包まれていた。
「弥生ちゃんは何故、私じゃなくて尊くんと連絡を取っているの?」
素直になる決心をした咲夜は、今度はアルコールの力を借りずに尊に質問をすることができた。
「その答えは結婚式の日に教えてあげる。決してマイナスなことではないから、それだけは信じて待っていてほしい。彼女のサプライズらしいよ」
弥生の気持ちを知った咲夜は、尊の言っていることを疑うほど弱くはなかった。だから、ここは全面的に信じて待つことに決めた。
「わかった。それで、尊くんと弥生ちゃんがコーヒーショップで一緒にいた友達は誰なの?」
「そいつはこのはな学園高等学校で俺の弓道部の同期だった川上健太郎だよ。咲夜が2年生の時に会ったインターハイ予選会場にいた五人のうちの一人なんだけど,,,。ねえ咲夜は、鍋倉さんが2次元オタクだって知ってた?」
「2次元オタク?」
アニメやゲームのキャラに恋しておっかけとかをする人達のことだろうか?
「ああ、鍋倉さんの外にも同人誌を描いている新清涼女学院の弓道部員がいたらしいよ。その人たちと鍋倉さん、俺と咲夜をモデルにした漫画を描いているんだって。高校時代からずっと」
「私と尊くんの漫画?!」
酔いの冷めた咲夜は、今は素の状態で驚いているらしい。目をくるくるさせているのがその証拠だ。
「川上も高校時代は同人誌を描いていたんだ。もっとも、モデルは咲夜と鍋倉さんだったけどね」
「私と弥生ちゃん?!」
ますます混乱した咲夜は大きく首を傾げている。
「まったく可愛いな、咲夜は。,,,川上の描く漫画は,,,その、百合だったんだけど、鍋倉さんの方はTLとBLどちらもありらしいんだ」
百合とは女性同士の恋愛もの。TLとはティーンズラブ。BLとはボーイズラブのこと。
尊はスマホをサクサクっと操作すると、ホルダーを開いて、保存してあったファイルを咲夜に見せた。
「○☆□,,,!!」
衝撃的な内容に加え、そのモデルが自分と尊、自分と弥生という事実に狼狽えている。
しかも、一部は咲夜が男性化して尊と恋人同士になっているものもある。
尊も初めて読んだときは言葉を失ったのだから、咲夜の混乱はもっともだと理解できる。
「もちろん名前も変えているし、当時の弓道部員以外は誰も俺たちがモデルだとは思っていない。これね,,,結構フォロワーが多いらしくて、いまだにシリーズとして続けて描いているらしいよ」
尊は苦笑しながらもなぜか嬉しそうだ。
「川上の方は、高校までで弓道をやめて、映像の道に進んだから、君達との接点もなくなって百合漫画を描くのをやめたんだけどね」
漫画の中で、咲夜と弥生に似たキャラクターが絡んでいる。
「咲夜は勝手にこんなことをする鍋倉さんや川上が許せない?」
真っ赤になっている咲夜だが、その事については大きく否定した。
「名前も変えてるんだし、個人を特定できない想像上のお話なんだからモデルにされるくらいなんともないよ」
咲夜がそういうと、尊も笑って頷いた。
「俺も同じ考えだ。だから、鍋倉さんと川上が気が合うんじゃないかと思ってあの時に紹介したんだ」
想像通り、二人は気が合っていた、と尊は語った。
それを聞いて、咲夜の悩みはひとつ解決した。やっぱり疑問は口にしないと解決しないんだなと、遅れはませながらではあるが、経験を通して咲夜は学んでいた。