凛々しく、可憐な許婚
教室に入ってもやはり、生徒の様子がおかしかった。

「光浦先生、吉高先生とお付き合いしてるって本当ですか?」

「婚約してるって聞いたけど、その指輪も吉高先生から貰ったの?羨ましい」

女子が咲夜を取り囲む。

「違います。私の婚約者は他の人ですし、吉高先生は関係ありません」

毅然として言い放つ咲夜に対し、女子生徒達も引き下がらない。

「でも抱き合ってたって聞いたよ?」

「私はキスしてたって聞いた」

噂はどんどんエスカレートしてとどまることを知らないようだ。

「抱き合ってもいなければ、キスもしてません」

「じゃあ、姫の相手って誰なの?」

「企業的な施設の経営に参画してる人です」

嘘ではない。

「それなら、大手塾の御曹司の吉高先生も該当するじゃん」

もしかして墓穴を掘ったのだろうかと、内心、咲夜は頭を抱えたが、気を取り直して

「そんなことより、さあ席について。ホームルームを始めます」

と生徒を着席させた。

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