凛々しく、可憐な許婚
「光浦先生,,,。打ち合わせをしましょう」

咲夜の隣のデスク。そこは今日から尊のデスクになるようだ。

化学と国語。理系と文系、水と油,,,。

"鈴木先生、どうせなら理系のクラスの副担任になればよかったのに"

憧れの鈴木とどうこうなろうなんて恐れ多くて、"遠くから眺められればそれでいい"ぐらいが丁度いい。

担任と副担任だから、席が隣なら何かと相談しやすいが、

尊は今、誰もいないのをいいことに、俯いている咲夜の顔を覗き込もうと、かなり顔を近づけている。

「ち、近いですから,,,」

「雅臣とだってこのくらい近づいてたでしょ」

"なんなの,,,?この人本当はこんなキャラだったの?"

咲夜の思い出の中の"鈴木先輩"は、いつだって凛としていて、真っ直ぐに的を見据える無口な王子様といった感じだった。

周りの人を包み込むオーラ

このはな学園の弓道部員の中心で一際輝く存在感

"あの鈴木先輩と一緒に仕事をするんだ,,,"

ふと、現実に戻り、咲夜は下を向いていた顔を上げて尊を見つめた。

"ああ、やっぱりイケメンには違いないわ,,,"

焦げ茶色の瞳が絡み合うこと、十数秒,,,。

先に目を逸らしたのは尊だった。

「鈴木せんせい?どうしたん,,,ですか」

「出た,,,必殺技」

微笑みをたたえて首をかしげてしまうのは、咲夜のいつものクセ。

尊はふいっと窓の外に視線をやると

「いや、長年遠くから眺めていたものを間近で見られて本望です」

と呟く。

窓から吹き込んできた風の桜の匂いが、これから咲夜の身の回りに起こる何かの幕開けを告げているように感じさせた。





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