主任、それは ハンソク です!

「……なるほど。だから、あんな言葉が平気でポンポン飛び出すわけかぁ」

 半眼でつぶやく主任はやっぱり怖い。どうやら父も祖父母もみんな、私の知らないうちに、主任の地雷を完璧に踏み抜いてしまった。
 
「ヨーコさん。君はもう、一人の成人した立派な女性だが、生憎、お前さんの家族は君の事を、物かペットぐらいにしか思ってないようだ」

 主任の一言に、今度は私が驚く。

「がっつり言われたよ。上司という立場に託けて孫娘を誑かすなって。俺みたいなどこぞの馬の骨に、大事な跡取りを傷物にされてたまるか、だそうだ」

 恥ずかしさのあまり、体が震えだす。跡取りって言ったって、ウチは分家だから、そんな御大層なものなんかじゃないし。

「それと、来週末には見合いも決まっていて、相手もかなり乗り気だから、そのまま婚約、結婚になる。だから、どっちにしろ仕事は今すぐにでも辞めさせる、とも言ってたな……」

 何それ。そんな話、初めて聞いた。
 驚く私の様子に、やっぱりそうかぁ、と主任が呻くように呟いた。

「本人からはそんな話は一切聞いていないし、第一辞めるなら20日前には申請をしてもらわないと、こちらとしては一切受諾できないって返したら、そんなこと知るかって怒鳴られてしまってな」

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