主任、それは ハンソク です!

「酒が入るって恐ろしいな。普段なら冷静に流せるし、頭下げて済むことなら、そんなものいくらでも下げるんだけど」

 なんでしょう、変な汗、出てきた。

「あまりな物言いに、つい、ヒートアップ、してしまった、もんだから」

 ……ひ、ひーと、あっぷ。

「ヨーコさんのご家族が俺に言ってきたことは、至極全うな言い分で、もちろん俺の方に充分非はあったから、最初は、謝る気満々だったんだ」

 ……えーっと。これって、もしかして。あの人たち、主任の地雷、踏んだ?

「でもな、あっちの一方的な言い分を聞いてるうちに、だんだん、こう、腹が立ってきて、……だな」

 主任が目を眇めた。やっぱり、何かとんでもなく失礼をやらかしたんだ、あの人たち。

「すみませんでした、主任。あ、あの、うちの家族って、自分の考えこそが一番正しいって人たちでして、それがたとえ公序良俗に反するようなことでも、あくまでも自分たちの言い分が、基準で絶対、なんです」

 私の呻くような言い訳に、主任が目を見開いた。

< 107 / 206 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop