主任、それは ハンソク です!
いやでも、美知留さんのその言葉はブーメランな気がする。美知留さんも近い将来、清州産業グループのトップの妻になるような……。
「いえいえ、とんでもないです! カジタツさんって人はですね、他人の不幸が大好物な極悪非道人なんですよ」
……ごく、あく。
「ヤツは、相手の弱点を見破るのが異常に得意でして、あたしが男性、しかも大柄の男くさいタイプが最も苦手だってわかってる上で、あえて統括副部長の下に付けたんですよ」
チコたんさんっ、と私は思わず彼女の手を取った。
わかる、わかりすぎる。貴女の気持ち。そう言うと、彼女の顔がぱぁっと花が咲いたみたいに満面の笑みになった。
なるほど、こんな紆余曲折を抱えた人なら、主任が守ってしまうのも納得だ。
「この前だって、そうですよっ! プラザホテルの交流会の前日、あたしや企画室スタッフ、統括副部長まで駆り出して、徹夜で会場設営させたその間、肝心のテメェはホテルの部屋でぐーすかぴー。挙句、エキナカのコーヒーショップで優雅なモーニンですもん。しかも、そこにあたしと統括副部長を呼びつけて、ねぎらうどころか、なぜかダメ出しですよ? ひどくないですかぁ?」