主任、それは ハンソク です!
あ、と思わず声が漏れてしまった。
「……それって、もしかして。先月の頭にあった、企業交流会の前の日の……、土曜日の朝、ですか?」
そうそうそれですっ! と涙目のチコたんが私の手を握りこんでブンブンと振った。
例の噂、主任が朝からエキナカのコーヒーショップで女性二人と修羅場ってたという、あれの真実がこれ。
なんだか無性に、チコたんが気の毒に思えてならない。
「あたし、常々カジタツさんに口すっぱくして言ってるんです。一体アナタはこの世の何と闘っているのかって。なんなんだろうなぁ、あれ。とにかく人を面倒な目に合わせたいっていうか、人を掻きまわしては悦に入るっていうんですか?一事が万事、そんな感じなんですよ、あの鬼畜はっ!」
その時。
「あぁーらら。チコたんが激怒モード炸裂させてるわぁ」
ひぃいいいっっ! とこの世の物とは思えないような声を上げて、チコたんがぴょんと飛び上がった。