主任、それは ハンソク です!

 あ、と思わず声が漏れてしまった。

「……それって、もしかして。先月の頭にあった、企業交流会の前の日の……、土曜日の朝、ですか?」

 そうそうそれですっ! と涙目のチコたんが私の手を握りこんでブンブンと振った。

 例の噂、主任が朝からエキナカのコーヒーショップで女性二人と修羅場ってたという、あれの真実がこれ。
 なんだか無性に、チコたんが気の毒に思えてならない。

「あたし、常々カジタツさんに口すっぱくして言ってるんです。一体アナタはこの世の何と闘っているのかって。なんなんだろうなぁ、あれ。とにかく人を面倒な目に合わせたいっていうか、人を掻きまわしては悦に入るっていうんですか?一事が万事、そんな感じなんですよ、あの鬼畜はっ!」

 その時。

「あぁーらら。チコたんが激怒モード炸裂させてるわぁ」

 ひぃいいいっっ! とこの世の物とは思えないような声を上げて、チコたんがぴょんと飛び上がった。

< 174 / 206 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop