主任、それは ハンソク です!

 とはいえ最初は本当に、単純にその原因を探りたい程度の好奇心だったが、彼女と接していくたびに彼女自身を知りたくなって、気が付いた時には戻れないほど彼女に嵌っていた。

 彼女はよく、自分は他人の心象に残りづらい、要は影が薄いのだと、寂しそうに笑う。裏を返せば、そうしないといけない理由があった、となるのだが、その原因を知って、俺は思わずうなってしまった。

 それは、クラスの馬鹿な男子どもだ。

 彼女は一見目立たないタイプだが、率直に言うと美人だ。
 色白の肌に映える真っすぐなロングの黒髪に、黒目勝ちのつぶらな瞳。ちょこんと乗った形の良い鼻は可愛らしいのに、その下にある唇はぽってりしていて、ぐっと大人の艶っぽさを滲ませる。子どもの頃もさぞ可愛かっただろうと、容易に想像がつく。

 小さい頃から彼女は控えめで、もの静かなタイプだったようだ。

 これはもう、クラスの悪ガキにロックオンされるしかない宿命と言ってもいいだろう。しかも狙う男子どもは単純に『好きだから構う』のであって、悪気は一切ない。だから余計に質が悪いんだが、彼女も、なぜわざわざ自ら嫌われることをするのかと、呆れていた。

 俺も激しく同意する。

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