主任、それは ハンソク です!
「あの、仲の良い友達とかとはしてますよ? ランチ会とか。でも、夜にお酒飲んでっていうのは、生まれて初めてでして」
主任が更に目を見開く。
「なんで、また」
「ええっとですね……、祖父母がやたらと煩いから、かな」
短大を出て就職した私に、社会人とはいえまだまだ子供だからと祖父母が課した門限は夜の7時。飲み会はおろか残業もろくに出来ない時間設定。
繁忙期に何度か門限を越えた時、カンカンに怒った祖父がその度に職場へ直接文句を言いに来た。
冗談のような話だけれど、それが原因で最初の会社は実質クビになった。貴重な正社員採用だっただけに、未だに悔いる時が何度もある。
20歳をとっくに超えた今現在ですら、門限は9時半。さすがに今では時間を多少破っても、残業だから、と言えば相当量の文句と引き換えにどうにか許してくれるようにはなった。
「じゃあ、今日は結構急だったけど、大丈夫なのか?」
はい、もう大人なんで、とだけ答えておく。今日の事を家族には正に『販促の定例報告会』とだけ言っている。実際、嘘はついてない、たぶん。
そうか、と呟くと主任は大きな氷の入ったグラスを再び傾けた。