主任、それは ハンソク です!
「俺な、お前さんにはルーティンな仕事よりも、むしろイレギュラーの方を主に担当して欲しいと思っている」
「イレギュラー、ですか」
イレギュラーの意味はもうバッチリ分かってる。特別発注の販促物のこと。季節の企画やなんちゃらフェアとか、毎度毎度新たに作るものだ。
「俺は経営や経済しか勉強して来なかったから、正直クリエイティブな方面は門外漢だ」
「……はぁ」
「この会社に来て丸2年。今までは、何とか従来のデザインをやりくりして誤魔化してきたけど、清州グループから斉藤参与が来てからは、何かと指摘が入り出してな」
主任が焼酎の瓶に手を掛けたから、慌てて私が手を伸ばす。首から『鈴原』の文字入りプレートが掛かっているそれは、いわゆるボトルキープってやつだろうか。初めて見た。
「いや、いいよ。気にすんな、自分のペースで飲ませてくれ」
「……はぁ」
おずおずと手を引く私を見て、またしても主任がくすっと笑う。私は梅の香りが少しきつめなジョッキをくいっと飲みきった。