主任、それは ハンソク です!

 私は小さく深呼吸する。

「まず、一つ目、ですが」

 主任がじっと私を見るから、ますますいたたまれない気分になる。

「……えっと、その前に。飲んで、ください」

 主任が目を眇める。

「ぐ、グラス。主任、全然、飲んでないじゃないですか」

 言われてみればそうだな、と呟くと、一気にグラスを煽った。
 いや、なんで? そこまでしなくてもっ。極端すぎるっ!

「よし、これでいいか?」

 そんな風に言われたら、頷くしかないじゃない。

「……あの、それでは、改めて」

 ぐっと主任が体を乗り出したから、距離が妙に、近くなる。

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