主任、それは ハンソク です!

 ナイス俺、なんてぶつぶつ言いながら、主任が足元のブリーフケースから一冊の本を出した。

「お前さん、明日からこれ読んで勉強しろ。んでもって、年内に資格とれ」

 手渡されたそれは、年季の入った代物だ。

「……カラー、コーディネイト?」

 ああ、と返事をすると、またしても主任がグラスを煽る。……ちょっと、ペースが速くないかな。

「いいか、とくがわ。世の中の摂理は全部、コイツで説明が、つ、く……」

 主任の動きがフリーズしたかと思うと、ふはぁ、とため息を吐きつつテーブルに突っ伏した。な、なんかすごく、落ち込んでるんですけど。

「俺さ、唯一の特技が、100人くらいなら人の名前と顔を一発で覚えられる事だったんだけど。なんなんだよ、これは……」

 口の中が焦りで渇く。
 私は思わず目の前の梅サワーを一気に呷った。でも、渇きは全然治らない。

< 95 / 206 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop