主任、それは ハンソク です!

「昨日もそうだぞ。いくら頑張っても、名前がするっと抜け落ちて、俺の唯一無二のアイデンティティが大崩壊寸前だよ……」

 ん? 昨日。
 昨日ってことは、あの主任の機嫌の悪さの原因って、まさか、これ?

「あのっ。この際、とくがわでも、いいですからっ、話、続けてくださいっ!」
「……お前さんさ」

 主任がテーブルに突っ伏したまま、私をじぃっと見あげる。
 酔いで若干座った目が怖い、けど、なんというか。艶っぽくもある。

「そうやって、ずっと、相手を優先してきたんだな」

 びっくりした。そんな風に言われたことなんて、なかったから。
 主任の目元がふっと緩んだ。

「下の名前、何?」

 し、したの、名前?

「苗字じゃなくて」

 ああ、そういう事か。

「洋子、です」

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