眠れる窓辺の王子様
二章 昼日中の再会
風の冷たい季節が過ぎ去り、四月に入った。
ハルカとの奇妙な出会いがあってから一度だけアイツの家の前を通って通学してみたが、もう一度会うというようなこともなかった。
そして中学二年の三学期も春休みも終わり、桜までもが散り始めていた。
冬眠でもしてんのかなあいつ。
まあ、私には関係ないんだけど。
そう完結させて頭の隅に追いやると、別のことを考え始める。
「にしても暑いな」
強い日差しに目を細めながら額に手を当てて影を作る。パーカーを脱いで自転車のかごに適当に放り込んだ。
少し汗で張り付いた長袖のシャツを肘まで捲ったついでに腕時計で時間を確認すると、目当てのタイムセールの時間までまだまだ余裕があった。
「専業主婦かっての」
苦笑いで呟きながらも、所持金をどれだけ節約できるか計算している辺りがもう歴とした主婦だなと溜息をつく。
そんなことが友達にばれたらと思うとぞっとする。
「未来には似合わないよね〜」と散々からかわれて笑われた小学校時代の痛い思い出が蘇って顔を顰めた。
なんだか気分が重くなり、はあ、とため息をこぼした。
向かうスーパーは国道に面していて、一度学校の方面に行ってからだとアクセスがいい。
吹き抜ける心地よい風を感じながら自転車で突き進む。