エリート弁護士と婚前同居いたします
学生の頃のように、好きな人とべったり一緒にいられるわけではないことくらい理解している。社会人になった以上、生きていくためにも仕事はしなくちゃいけないし、恋愛事ばかりにうつつを抜かしているわけにはいかない。何より仕事には責任がある。

　私は男性が苦手なわけでも恋愛が苦手なわけでもない。かといって、恋愛至上主義でもない。ただ、好きな人ができたらその人に真摯に向きあいたい。一緒にいる、その意味をきちんと考えたい。好きな気持ちをきちんと伝えたい。

付き合う人とは将来を一緒に歩んでいくことを真剣に考える。考えられない人とは付き合わない。そのままの気持ちでずっと一緒にいたいと願う。年齢とか結婚適齢期だとかは関係なくて、私の恋愛に対する姿勢は初めて彼氏ができた高校生の時からずっと変わらない。

だからこそ、付き合うことになり、彼氏になったら積極的に相手を想う気持ちを伝えるし、相手にも伝えてほしいと願う。

　それはそんなにいけないことなのだろうか。重いことなのだろうか。

　親友の詩織は付き合う相手にもよるんじゃない、と言う。そういう風に愛情表現をすることが苦手な人やできない人もいるだろうからと。でも私の気持ちは一般的な恋愛観からすると重ためらしい。そのせいなのかどうかはわからないが、なかなか恋もできないし彼氏もできない。

「とにかく、彼氏はいないので頼れる異性はいないの」
　そう言い切ってアイスコーヒーを飲むと、口の中に心地よい苦味が広がった。
< 10 / 155 >
表紙・目次

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop