エリート弁護士と婚前同居いたします
彼と暮らし始めて半月が経った。姉はすでに部屋を引き払い、今は侑哉お兄ちゃんの自宅で同棲している。来月頃には大阪に引っ越す予定だと、この間電話で話していた。入籍、結婚式についてはとりあえず、大阪に引っ越してから考えるそうだ。

 ニュースでは連日梅雨明けが近いと言われている。晴れる日が多くなり、陽射しも強烈になってきた。気温も上がり、街には夏を感じさせる明るい装飾が増えていた。

 私が思っていたよりも朔くんとの暮らしは順調だった。彼は基本的に細かいことをあれこれ言わない。家主なのに、料理や掃除は当番制でいいときちんとルールを作ってくれた。掃除、洗濯は家が広いせいもあり、時間はかかるけれど私はなんとかこなしていた。

朔くんは自分の部屋は掃除しなくていいとも言ってくれた。私も自分の部屋は自分で掃除している。ちなみに朔くんは当番ではなくても掃除や洗濯を手伝ってくれる。料理は平日の夕食は一緒に取れない日が一週間に何度かある。その時は各自で準備をしている。

 何もかも手伝ってもらってばかりで、気がひけてしまい、私が逆に負担をかけていないか彼に尋ねたことが何度もある。
『家事をしてほしくて一緒に暮らしているわけじゃないから』
 そのたびに彼は優しく言い切ってくれていた。
『むしろ俺が思うよりできていてビックリする』
 そんな失礼な評価ももらったけれど。

 私はほぼ居候のようなものなのにまるで姉と暮らしていたときのようにくつろいで暮らしていた。
 彼はやはり多忙で帰宅しても遅くまで起きていることも多いようだった。深夜に帰宅することも珍しくなかった。そんな時は必ず連絡を入れてくれて、先に休むように言われた。

 彼はいつも私を気遣ってくれていた。自分の方が多忙なのに私のために、度々作り置きや冷凍したおかずを用意してくれていた。
『香月さんに頼まれたし、色々お前の好きなものも聞いたから』
 そう明るく言って休日に作ってくれている。そんな姿を見るたびに、申し訳なさと共に湧き上がる甘い胸の痛み。
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