君と永遠に続く恋をしよう
(私……もしかして……もう既に彼のことを……)


気づいた矢先、電話の音が鳴り響いた。

ビクッと背中を伸ばす私とは違い、彼は冷静になってポケットの中に手を伸ばす。それからディスプレーを見て表情を硬くし、背中を向けると電話に出た。


「もしもし。明日香?」


あすか…と女性の様な名前を呼び捨て、話を聞いた彼が電話を切って振り向く。


「ごめん、急用が入った。まだ話したいけど今夜はこれで」


おやすみ…と言いながら頬に軽く触れ、名残惜しそうに歩き去る。

私はそんな桜庭さんの背中を見つめたまま、胸の奥が暗く凝り固まっていく錯覚を感じた___。




「……ねぇ兄さん、『あすか』さんて誰か知ってる?」


夕食の片付けを手伝いお風呂を済ませた後、部屋に入った私は兄の写真に向かってそう訊ねた。

さっき、桜庭さんはその人からの電話を出る前に一瞬だけ顔を強張らせて、話を聞いてる間も沈黙し、ほぼ頷いてるだけだった。

なのに、電話を切ると「急用が出来た」と言って帰って行った。

それで私は、その『あすか』さんという人の所へ向かったんだろう…と予測してるんだけど。


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