皇帝陛下の花嫁公募
 すべての特技の披露が終わり、休憩を挟んだ後、再び大広間に集められた。

 椅子にずらりと並んで座る娘達の前で、女官が何やら紙を持って現れた。そして、咳払いをすると、話し始める。

「審査が終わりました。最終候補は五名で、これから名前を呼ばれた方となります。呼ばれなかった方は帰っていただいてけっこうです」

 みんなが緊張して身構えるのが判った。リゼットもドキドキしながら、自分の名前が呼ばれるのかどうか聞き耳を立てる。

「まず一人目……」

 名前が呼ばれる度に、呼ばれた本人は飛び上がって喜ぶ。他の者はまだ緊張が解けず、焦る気持ちを隠しきれず、拍手のひとつもしなかった。

 二人目。三人目。四人目……。

 リゼットは不安になってきた。

 やはり、自分は田舎の国の王女だから、皇帝の花嫁には選ばれない運命なのだろうか。

「最後の方は……アマーナリア王国のエリーゼティア・ミーゼン・メル・アマーナリア王女殿下」

 よかった……!

 リゼットは胸を撫で下ろしたが、周囲の娘達からはじろりと睨みつけられた。ナディアが後ろから小声でお祝いを言ってくれる。

「姫様、おめでとうございます!」

 リゼットは振り返って、ナディアに笑ってみせた。

 名前を呼ばれなかった者はツンツンした態度で立ち上がり、聞こえよがしに嫌味を言いながら退出していった。
< 114 / 266 >

この作品をシェア

pagetop