皇帝陛下の花嫁公募
「何よ、審査がおかしいのよ。あんな田舎娘なんか選ばれるわけがないわ」

 リゼットもそう思っていたのだが、最終候補には残れたのだ。どういう基準で選んだのかはさっぱり判らないが、とにかく残れたことは喜ぼう。

「最終候補の方々は、明日は皇帝陛下に直々にお会いすることになるので、失礼のないように正装してお越しください」

 後は皇帝の好み次第ということだろうか。

 幸い帝都に来てから少し日数があったので、祖父が見かねて流行のドレスを一着だけ誂えてくれた。それを着て、明日は皇帝に気に入られるように振る舞おうとしよう。

 もし、万が一、皇帝に見初められてしまったら……。

 リゼットは想像してみた。

 もちろん、それを目当てにはるばるここまでやってきたのだし、試験だって頑張ってきたのだ。だが、実際、明日にもう花嫁が決まるのだと思うと、胸が騒いでくる。

 わたし……本当に皇帝陛下の花嫁になりたいの?

 いや、なりたいとかなりたくないとか、そういう自由はないのだ。選ばれれば結婚する。それは最初から決まっていたことだ。

 アマーナリアのために。

 政略結婚は王女としての義務なのだ。

「姫様、明日が楽しみですね!」

 ナディアは無邪気に喜んでいる。リゼットも微笑み、彼女に同意してみせた。
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