皇帝陛下の花嫁公募
 祖父は最初からリゼットに勝ち目がないと決めつけていたから、最終候補に残っただけでも上出来なのだろう。

 いい縁談なんて……。

 リゼットは溜息をついた。

「あら、どうなさったんですか? 明日のことが心配だとか?」

「ええ、まあ……」

「大丈夫ですよ! 姫様が一番お綺麗で、一番皇帝陛下の花嫁にふさわしいですから!」

 どんな根拠で言っているのか判らないが、ナディアの中ではリゼットが一番なのだと思うと、嬉しくなってくる。
「ありがとう、ナディア。ナディアが一緒にここに来てくれて、本当に助かってるわ」

「まあ……姫様! わたしこそ、姫様のお傍に置いていただけて感謝してます。わたし、一度、この街に来てみたかったんですよ。だって、わくわくするじゃないですか! もちろんアマーナリアも好きですけどね」

 彼女の言いたいことは理解できる。リゼット自身、アマーナリアののんびりした雰囲気は好きなのだが、活気のある街にいると自然と元気が出てくる。すべてが流行のものであふれているし、便利なものもある。そんなものを目にするだけで、楽しくなってくるのだ。

「宮殿も美しくて……」

 ナディアはそう言いかけて、何かにはっと気づいたように口ごもる。

「いえ、アマーナリアのお城がそれに劣るわけじゃないんですよ!」
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