皇帝陛下の花嫁公募
「いいのよ。城が古くて、修理が必要なところもあるってことは、わたしにも判っているわ」

 それは事実だから、悪口を言われたとは思わない。

「すみません、姫様。わたし、浮かれすぎですよね」

「もしかして、誰かいい人と出会ったとか?」

 なんの気なしに口にした言葉だったが、図星だったらしい。彼女はたちまち真っ赤になった。

「そ、そんな……。いい人とかじゃないですよ。ただ……少しだけ。話をしただけです!」

 そんなに強く否定しなくてもいいだろうに。リゼットはナディアの反応を微笑ましく思った。

「いいのよ。どこで会ったの? その人と」

「宮殿で……。でも、大したことはないんです、本当に。わたしが勝手に気にしているだけで」

 ナディアは自分から男性に話しかけるようなことはしない。だから、向こうから話しかけてきたのだろう。リゼットが試験を受けている最中のことだろうか。

 リゼットが花嫁に選ばれれば、ナディアにもそのまま侍女でいてもらうことはできる。そうしたら、その誰かと結婚……なんてこともあり得るだろうが、リゼットがアマーナリアに帰るのなら、ナディアはやはり一緒に帰ることになるのだろう。

 まさか、自分の運命がナディアの運命も左右することになるとは……。

 でも、今はどう転ぶか判らないのだから、そこまで考えるのはやめよう。
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