皇帝陛下の花嫁公募
 リゼットは振り返った。

「ナディア……わたしはあなたには幸せになってもらいたいと思っているのよ。侍女をやめて、結婚したいと思ったときは、遠慮なく言ってね」

「結婚なんて、まだ考えてません!」

 彼女はそれだけはきっぱりと否定した。

「わたしもそう思っていたわ。でも、機会を逃してはダメ。それだけは覚えておいて」

 真面目にそう言うと、ナディアも神妙に頷いた。

「もう髪はいいわ。おやすみなさい。明日に備えて早く寝てね」

「姫様もゆっくりお休みくださいませ」

 ナディアは微笑みを浮かべて、部屋を出ていった。

 リゼットは鏡の中の自分の顔を見つめる。

 アロイスに会いたいのに、今夜は会いたくない。彼のことが好きなのに、別れなくてはならないなんてつらいから。

 でも……仕方ないのよ。
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