皇帝陛下の花嫁公募
 彼はふっと笑った。

「残念だったな。あのとき求婚を承諾していれば、皇妃の座は君のものだったのに」

 嫌味な言い方に、リゼットはカチンとくる。

「言っておきますけど、わたしは自分のために花嫁になりたかったんじゃないわ。アマーナリアのためよ。……アマーナリアってご存じかしら?」

「当たり前だ。自分の帝国の一部を忘れるはずがない。地図で示されなくても知っている」

 どうやら、あの屈辱の場に彼もいたらしい。

「それなら、アマーナリアのことは? どんな国だか知っているの?」

「……辺境の地だ。湿地帯が多く、作物を育てる畑もあまりなく、ろくな産業もない」

「そう。ヴァンダーン帝国のものになる前は、誰も欲しがらず、誰からも関心を持たれなかった。交通の上でも戦略の上でも重要ではないから。でも、アマーナリアの国民は困っているの。だから、援助金が欲しかったのよ」

「援助金だと?」

「花嫁募集の書状に書いてあったわ。花嫁に見合う援助金がもらえると。わたしはそれが欲しかったの!」
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