皇帝陛下の花嫁公募
 伊達に幼少の頃から野山を駆け回っていたわけではない。ほんの幼児の頃から、リゼットは家庭教師から体力をつけるために、そうした訓練も受けていたのだ。

 政略結婚生活には何が待ち受けているのか判らない。王女たる者、いざとなったら自分の身を守ることくらいはできなくてはならない。

 もっとも、家庭教師は今のリゼットのおてんばぶりを自分のせいだと悔やんでいるのだが。

 リゼットは秘密の通路を使って、城壁の外へと出た。

 秘密といっても、リゼットがこんな格好で農作業などの手伝いに出ていることは、親兄弟、そして側近などには知られている。いくら悪人でも興味を示さない辺境国とはいえ、一人で出かけることを秘密にしておくわけにはいかなかった。

 ただ、城で働く者達の多くはそのことを知らないし、身元の判らない少年が城の中を歩いているのを見られたり、ましてその少年が実は王女だったりすることが気づかれるのはあまりいいことだとは思えなかった。

 いくらおてんばでも、王女は王女だ。仰天されるのは間違いない。

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