皇帝陛下の花嫁公募
 城壁の外へ出ると、馬を二頭連れた細身の少年がリゼットを待っていた。

「テオ! ごめん、待った?」

「少しな」

 彼は一頭の手綱をリゼットに差し出した。昨日のうちに、この時間にここに来てくれるように頼んでいたのだ。

 テオは実はリゼットの護衛だった。細身で力もなさそうに見えるが、実際は武道の訓練を受けている。本来ならリゼットに付き合って農作業の手伝いをするより、もっとましな仕事があるだろうが、彼は文句も言わずに護衛の役目を果たしてくれている。

 もっとも、今まで危険な目に遭ったとは一度もないのだが……。

 とはいえ、用心はいつだって必要だ。

 城は小高い丘の上に建っていて、そこから下っていくと、街が城を取り囲むように広がっている。アマーリアの中でも唯一賑わっているところでもあった。そして、家々が建っている場所を抜けると、リゼットが手伝っている畑がある。
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