MちゃんとS上司の恋模様
「麦倉さん、頑張って」
「へ?」
「ご武運を願っているわ」
「は?」
それだけ言うと、宮間さんは慌てて仕事をし始めた。
残された私はなんのことだかさっぱりわからず、疑問符ばかりが頭の中にいっぱいになる。
ご武運って、一体どういうことだろうか。全くもって意味がわからない。
わかっていることは、宮間さんは須賀主任に断られたということだけだ。
チラリと須賀主任のデスクを見る。すると、須賀主任と視線が合ってしまった。
慌てて視線を逸らそうとしたのだが、恐ろしいほどの形相をしている須賀主任から目が離せなくなってしまった。
挙動不審の私に向かって、須賀主任は口をパクパク動かし出した。
ゆっくりとしたその動きは、私に何かを伝えようとしているように感じる。
私は須賀主任の口元を見つめ、彼が私に伝えようとしている言葉の解読に励む。
(ん? なに……あ、き、ら、、め、ろ……諦めろ!?)
ギョッとして口を開いた私に、須賀主任は意味深に笑った。だが、その笑みの恐ろしいこと……!!!
背筋に冷や汗が伝っていく。悪魔にほほ笑まれた、そんな感覚を覚えた私は慌てて視線を逸らしたのだった。