MちゃんとS上司の恋模様



「おい、麦倉」
「なんですか。今、手が離せないので急用以外でしたら後で伺います。もし時間に余裕がある案件でしたらメモでも書いてデスクに貼っておいてください」

 手も止めず、もちろん視線を須賀主任に向けることなく黙々とファイリングをし続ける。
 こちらとしても今、手を止めてしまえば最初からもう一度やり直しという罰ゲームみたいな事態に陥るのだから必死だ。

 ブツブツ言いながら確認をしている私の目の前に、須賀主任は一冊のファイルを置いた。
 それに気が取られ、作業は一時中断。ということは、最初からやり直しということだ。

 なんてことするんだ、と怒り心頭で須賀主任を見上げると、そこには『鬼軍曹』の名にふさわしい笑みを浮かべた須賀主任がいた。

 その恐ろしい笑みに顔を引き攣らせていると、須賀主任はフンと鼻を鳴らした。

「相変わらずお前は良い度胸しているよな。よし、麦倉。お前に追加で仕事をやる。喜べ」
「は? え?」

 ファイルと須賀主任を交互に見やる私に、鬼軍曹は無理難題を突きつけてきた。

「この書類、今日中に纏めておけよ?」
「無理です!!」

 即答する私に須賀主任はどこか楽しそうだ。人を苦しめておいてそれはないだろう。

 所謂これってパワハラってヤツじゃないだろうか。
 訴えてやる。これはもう人事部に苦情を言いに行ってもいいレベルだ。

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