MちゃんとS上司の恋模様
「麦倉さん、ごめんね。これから僕、また商談に行くんだ」
「昼からもですか? 大変ですね。もし、お忙しいようなら違う日にしましょうか?」
忙しそうな藍沢さんを見て心配になっていると、彼は首を小さく横に振った。
「大丈夫だよ。心配してくれてありがとう、麦倉さん」
「い、いえ!!」
顔を赤らめる私の頭をポンポンと優しく触れたあと、藍沢さんはほほ笑む。
「じゃあ、十八時にさっきのロータリーでいいかな?」
「は、はい!」
元気すぎる返事をすると、「じゃあ、あとでね」と藍沢さんは爽やかに駅へと向かっていった。
その背中を眺めつつ、ボッーと夢のような時間を噛みしめた。
だが、ふと時間が気になってスマホを取り出す。あと少しで昼休憩が終わってしまう時間になっていた。
「わ! もうこんな時間!? 急がなくちゃ!」
慌ててスマホをミニトートバッグに入れると、私は会社に向かって走り出した。