MちゃんとS上司の恋模様



 距離の近さに、思わず飛び上がってしまった。
 そんな挙動不審な行動をする私にも優しい藍沢さん。本当に天使だ。

「どう? ダメかな」
「っ!」
「急な話で困るよね、ゴメン。ただ、麦倉さんの気持ちが変わらないうちに決行したいなぁと思ってね。断られたら困っちゃうから」
「そ、そんな! 断りませんよ」
「本当?」
「もちろんです! 今夜、大丈夫ですよ」

 大きく頷くと、藍沢さんはホッとした様子で息を吐き出した。

「良かった。断られなくて」
「断りませんって。お力になれるように頑張ります」

 グッと拳を握る私に、藍沢さんはクスクスと笑う。その笑い方さえも天使だ。

「ありがとう。じゃあ、急いで食べようか。そろそろ戻らないと昼からの仕事に間に合わなくなっちゃうからね」
「はい!」

 スピードアップして口を動かしながら、ふと須賀主任の顔が脳裏に浮かぶ。

 もしかして、もしかしなくても今日も残業なんて言い出したりしないだろうか。
 もし言い出したとしても、さすがに今日は断ろう。

 どうしても外せない用事があると言えば、鬼軍曹もなんとかしてくれるだろう……たぶん。

 そんな不安を抱きつつも、昼食を食べ終えた私たちは店の外へと出た。

< 93 / 182 >

この作品をシェア

pagetop