不器用な彼女
店は少し前まで賑わっていたが、今は社長と詩織だけになりカツミもカウンター席に座る。

「ここ、恭介が独立して最初にデザインしてくれたの」

ホロ酔いのカツミが話し始める。

「…とても…素敵です」

古民家チックな内装、古い和の家具や茶箪笥を見事にリメイクし酒やグラスを並べている。雰囲気ある間接照明にジャズが流れる店内。古臭いようで新しい。和モダンな感じ。



「詩織チャン、“神楽”ってね、“神様が楽しい”って事なの。私にとって、神様はお客様だから…ね、この店にピッタリでしょう?」

「そうですね!本当に素敵で…うちの社長はやっぱり凄いな〜って思います!」

社長の作品は評判が良いのだ。建築系雑誌に掲載される度に仕事が増えている。

ちゃんとお客様の要望を聞き、納得がいくまで話し合い、ひとつひとつ丁寧に作り上げる。

いつかそんな仕事をしたいと、そんな素敵な空間を作りたいと、詩織はこの道を選んだ。
< 15 / 203 >

この作品をシェア

pagetop