不器用な彼女
動揺

まさかの出来事

《太田医院》内科・胃腸科・小児科

何とも古い病院だ。

お爺ちゃんはオモチャのような鍵でそのドアを開ける。

「さぁ入って」

「ありがとうございます」

外観とは異なり、古いながらも床や壁はよく磨かれていて清潔感に安心する。スリッパに履き替え床を踏むとキィキィと音が鳴った。


お爺ちゃんは受付の小窓の向こうから問診票が挟まれたバインダーと体温計を詩織に渡す。

「これ、熱計って、問診票を書いたら持って診察室にどうぞ」

そう言って優しく微笑んだ。

「ありがとうございます」


“今日はどうされましたか?”の項目に“胃のムカつき”“目眩”“膝の擦り傷”と書き込む。

その下は“はい” “いいえ”の項目だ。

“現在服用している薬はありますか?” “いいえ”
“手術を受けた事はありますか?” “いいえ”
“アレルギーはありますか?” “いいえ”
“喫煙はされますか?” “いいえ”
“飲酒はされますか?” “はい”


“現在妊娠されていますか?”


“いいえ”に丸をつけて、ふと手が止まる。


最近、生理が来てないかも。

元々規則的な生理だが、疲れたりすると遅れる事もあり、あまり気にしていないけど。。。

…まさか…ね?






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