不器用な彼女
問診票の記入を終えると診察室のドアをノックする。
中から「どうぞ」の声。

古い丸ノブのドアを押すと、目の前には先程のお爺ちゃんが白衣を着て座っていた。

「先ずは、膝の消毒をしようかね」

蓋つきの茶色の瓶から、ピンセットでコットンを取り出すと詩織の傷を消毒する。

「こりゃ、派手に転んだね〜」なんてお爺ちゃんは笑っている。

壁に『診療時間変更のお知らせ』が貼ってある。

“木曜・日曜・祝日は休診です”

今日は木曜日だ。

「あの…お休みのところ申し訳ありません」

「いや、ここは半年前に閉めたから、今は毎日暇してるんだよ」

半年前に閉めた医院のなのに院内は清潔が保たれている。




「じゃあ、次はお腹の音を聞かせて下さい」

お爺ちゃんは見た目に反ししっかりした声で話す。80は越えてると思うけど。。。

お爺ちゃんは詩織のお腹の音を聞き、耳の後ろや首に触れる。目の充血を見たり、鼻や喉も覗き込む。

「ふ〜ん。これに採尿してきて」と紙コップを渡された。



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